ゾロ目の嵐 vol.10

  • 2016.11.17 Thursday
  • 01:29

JUGEMテーマ:エッセイ

 

2011年7月28日、私は自分の誕生日に、

栃木県宇都宮の友だちの家へ、1泊2日で遊びに出かけたのだった。

 

近くのバスターミナルから、直行便の高速バスで向かったのだけれど、

高速道路があまりにも渋滞していたため、運転手さんの判断で、

途中で一般道路を走行することになった。

 

私は景色を見るのが大好きなので、ずっとずっと外を眺めていた。

普段なら絶対に通らない道は、すべてが興味の対象だった。

 

田んぼの深い緑、国道沿いのお蕎麦屋さん、交差点のたもとにある小さな神社。

そういったすべての景色が、私にはとても新鮮だった。

 

ところが、国道を走り出してしばらくすると、

私はある現象に気づいたのだった。

あれっ? あれれっ??

目をこすりたくなるような現象。

 

「絆」、「キズナ」、「きずな」、「KIZUNA」・・・。

 

右を見ても左を向いても、「きずな」という文字が、

目の中に飛び込んでくる。墓地の広告看板であったり、

喫茶店の名前だったり、街のスローガンとして横断幕に記されていたり。

とにかく高速道路に戻るまでの1時間足らずの間、

私は「きずな」という文字を10回以上見続けたのだった。

 

確かに東日本大震災以降、「絆」という文字は、

いたるところに掲げられていた。

しかし一度にこんなにたくさん見たのは初めてだった。

 

やがて宇都宮に無事到着した私は、友だちにそのことを伝えた。

すると、「ふーん」の一言で終わってしまったのだった。

 

(そうだよね、別に大したことないよね。ただの偶然だよね。)

 

久しぶりに会った私たちはすぐに話しが弾み、

「きずな」のことはたちまち意識から消えてしまった。

 

その日の夜は街で有名な和食のお店へ行き、

誕生日を祝ってもらったのだった。

 

翌日は日光にある二荒山神社に連れて行ってあげると、

友だちが急遽提案してくれた。

少し前に自分も行ってみたところ、ものすごいパワーを感じたので、

カオルもぜひどうぞということだった。

 

そして翌日、私は友だちが運転する車で、

日光二荒山神社へと向かったのだった。

 

平日なので大混雑はしていなかったけれど、思ったよりも人が多かった。

さすが「世界遺産・重要文化財」なのである。

 

お天気はあいにくの曇り空だったけれど、

私にとってはその方が涼しくて好都合だった。

 

神社の敷地奥には小さな泉があって、

日光の霊水「二荒霊泉」と呼ばれている。

友だちはこの泉にパワーを感じると言っていたのだ。

ここの霊水は、その場で触れることも飲むこともできる。

 

早速ご本殿でお参りを済ませてから、

私たちは泉へと向かったのだった。

 

ところがその途端に団体ツアーがどっと押し寄せ、

小さな泉はたちまち見学者でギュウギュウになってしまったのだった。

 

(うゎっ、やだな。)

 

私には度々このようなことが起こる。

スーパーマーケットでブロッコリーを選んでいても、

特売でもなんでもないのに、たちまち人だかりになる。

 

どんなに高速バスの座席がガラガラでも、

いつも私の前後左右から席が埋まっていく。

私はそれがいやでいやでたまらないので、

その場合には、とにかく席を移動また移動なのだった。

 

だから残念ながら霊泉はまたの機会に、と考えた瞬間、

ポツポツと雨が降り出したのだった。やがてザーッと降り始めた。

すると団体ツアーの人々は、一目散に泉を後にしたのだった。

 

(良かった!)

 

雨はすぐに上がった。私と友だちしかいなくなった泉で、

私は霊水をこれでもかというほどがぶ飲みした。

 

そして泉の隣にある茶屋に入り、

友だちと私は霊水でたてた抹茶を頂いたのだった。

 

茶屋の入口には神様の名前が3つ書かれた木の板が立っていた。

私はそのうちのひとつの名前がなんだか妙に気になった。

だから私は珍しく紙切れに3つの名前をメモしたのだった。

 

「大己貴命(おおなむちのみこと)、田心姫命(たごりひめのみこと)、

味スキ高彦根命(あじすきたかひこねのみこと)」

 

特に「大己貴命」が気になって気になってしかたなかった。

なぜなのだろう・・・。

 

 

やがて神苑をゆっくり時間をかけて廻ったのち、

私たちは神社を後にしたのだった。

 

友だちと一緒に宇都宮まで戻り、そこから高速バスに乗って、

私は家路についたのだった。

 

その車中で私は再び不思議な現象に遭遇したのだった。

 

バスに乗ってすぐに私は深い眠りに落ちてしまい、

一時間ほど眠った後、私は目覚めたのだった。

 

バスは夕方の大渋滞に巻き込まれていた。

ふと隣の自家用車を見ると、ナンバーが3桁のゾロ目だった。

何気なくその前の車を見ると、同じ数字の2桁のゾロ目だった。

そしてなんと、その前の車は4桁の別の数字のゾロ目だった。

 

(なんだ?これ・・・。)

 

しかしそれから目的地に着くまでの間、

私はずっとずっとゾロ目に囲まれ続けたのであった。

 

あまりのゾロ目の数に、

途中から怖くなってしまい、外を見ないようにしていた。

それでもうっかり視線を窓の外に移すと、

やっぱりゾロ目がわんさかいるのだった。

 

あまりの出来事に私の思考はパンクしてしまい、

 

(道路交通法が変わったんだな、きっと。

ナンバーは誰もが覚えやすいようにゾロ目になったんだ。そうに違いない。)

 

私は無理やりそう思い込もうとしていた。

そうでなければこの現象を、だれがどう説明できると言うのか。

 

原因がわからないまま、ただただ数字を見ないようにして、

私は目的地までどうにかたどり着いたのだった。

 

そしてこの日から今この瞬間までずっと、

私はゾロ目に取り囲まれている。

 

あの日から、ゾロ目と私の生活が始まったのである。

 

 

 

・・・つづく・・・

 

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