シンクロニシティ Vol.70

  • 2017.01.22 Sunday
  • 01:41

JUGEMテーマ:エッセイ

 

私が住んでいる街の隣りに、私と同姓同名の人物が住んでいる。

漢字も全く一緒で、一字含まれている特殊文字まで同じなのだ。

 

なぜこのことが発覚したかというと、

仕事の関係で加入している社団法人への問い合わせの際、

電話に出た事務員さんが、

うっかり私とその人を間違えてしまったからだ。

 

私が受話器越しに名前を伝えると、

 

「あー、○○市にお住まいの方ですね?」

 

と自信満々に言うので、

 

「いいえ、私の住まいは△△市です。」

 

と訂正した。すると、

 

「あら? 台帳に書いてあることと違いますね・・・。

それでは名前を漢字で言ってみて下さい。」

 

ということになり、私は氏名を一字一字漢字で伝えたのだった。

しかしすべてが完全に一致していたので、事務員さんは困ってしまい、

 

「それじゃあ、生まれた年を西暦で言ってみて下さい。」

 

と言うので、私が答えると事務員さんは、

 

「やっぱりおかしいな・・・。」

 

と独り言を呟き、今度は、

 

「では生まれた月日を教えて頂けますか?」

 

となった。言われた通りに伝えると、事務員さんは遂に絶句してしまったのだった。

 

そう、驚くべきことに、私と同姓同名のその方は、

私と生年月日まで全く同じなのであった。

 

ヒェ〜〜〜!! こんなことってあるのだろうか!!

たとえば名前が同じ、生年月日が同じ、ということはあり得ても、

氏名と生年月日が両方とも同じ人なんて、聞いたことも見たこともない。

 

もう私は驚きすぎて、恐怖すら感じてしまったのだった。

きっと私の個人情報が盗まれて、誰かに悪用されているに違いない!

そんな考えが頭をよぎった。

 

すると事務員さんは、私とその人の相違点を一つだけ見つけてくれたのだった。

 

「もしもし? あのぅ、その方は男性でした。」

 

しかしそんなことを言われても、私の恐怖を打ち消すことはできない。

 

結局、後日別件で事務所を訪ねた際に、

その人物が実在するのかを調べて頂いたところ、

もう何十年も前から同じ場所に住んでいる、

身元のしっかりした方であることが判明したのであった。

 

ここでようやく私は安堵することができたのである。

 

しかし安堵した途端に、今度はこの偶然が奇妙に思えて仕方なかった。

 

個人情報保護の観点から、

その人物について詳しく教えて頂くことはできなかったけれど、

事実確認をしていただく中で知ってしまった、その人物のおおよその住まいは、

なんと、私がこれまで何度も何度も訪れていた、

私が最も好きな場所のすぐ近くだった。

 

これぞまさしく「シンクロニシティ」ではないか。

精神分析界の重鎮、カール・グスタフ・ユングが提唱する、

「意味のある偶然の一致」だ。

 

今まで度々書いてきたように、

東日本大震災の直後から、私には数々の変化や不思議なことが起こり始めていた。

そして2013年の年明け早々、この偶然の一致が発覚したのである。

 

その人物と私は、名前も生年月日も同じなのだから、

占い通りなら、同じ人生を歩んでいることになる。

 

そして何だか他人とは思えないその人物が、どのような人なのか気になって、

私はある日、友だちの背中に隠れて(なぜか隠れてしまった)、

その人物が経営している水産土産物店の前を、こっそり通過してみたのだった。

店舗の看板には、私と同じ苗字が堂々と表記されている。

 

間抜けな顔をして中を覗いてみると、いた! いた! 

恐らくその人物であろう男性は、

素敵に年を重ねた外見に、人柄のよさそうな表情を浮かべていた。

 

私は全くの他人であるこの人物に、だんだんと親近感を持ち始めていた。

家族経営なのか、隣りには奥さんらしき綺麗な女性が立ち、

お母様らしき優しそうな方もそばにいて、商売も繁盛この上なく、

見る限り幸せを絵に描いたような人生を、もう一人の私は送っていたのだった。

 

私はそれを確認すると心底ホッとしたのである。

こんなに近くに生きていて、けれど今まで知る由もなかった存在。

ふとしたことがきっかけで、クローズアップされた不思議な縁。

 

職業はまったく違うけれど、彼があんなに幸せそうなのだから、

きっと私の人生も安泰なのだ。

だって名前の画数も、生まれた日にちもまったく一緒なのだから。

 

な〜んて楽観的に考えている私がそこにいた。

今回のシンクロニシティの意味は、

楽観的に生きろということを教えるためだったのだろうか。

それともこれから真の意味が、解明されていくのだろうか。

 

100%あり得ない話ではあるが、万が一この方と身内になった日には、

郵便物がややこしい上に、保険証の記載が面白すぎるではないか。

 

いずれにしても私は既に、不思議な渦の中にいる。

不思議の渦を回り切ったら、一体どこへたどり着くのだろう。

 

生きているとこんなふうに、不思議なことが山ほど起こる。

山ほど起こる謎解き合戦、なんだかとってもオモシロイ。

 

生きるって、こんなにオモシロイことだったのね。

 

 

 

・・・つづく・・・

 

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