啓蟄 vol.110

  • 2017.03.05 Sunday
  • 01:47

JUGEMテーマ:エッセイ

 

3月5日(日)は啓蟄だ。

啓蟄とは24節気の3番目のことで、

「冬籠りの虫が這い出る」(広辞苑)という意味だ。

春の陽気に誘われて、そろそろ虫たちが穴から出てくるころを指し、

その通り、一両日前から、クモやテントウムシを見かけるようになった。

 

24節気が巡り来る度に、私はその的確さに驚いてしまう。

行きつ戻りつしながらも、24節気を境に季節がちゃんと進むから。

 

植物や虫たち、鳥たちのように、

自然の中で暮らしている生きものたちは、誰に教わることもなく、

生れてから死んでいくまでの「過ごし方」をちゃんと知っている。

24節気の流れにその身を上手に漂わせ、生涯を生きつくしている。

 

私はそんな動植物たちに接する度に、ただただ圧倒されてしまうのだ。

そこには私に足りない絶対的な強さがあるから。

運命を受け入れるだけの強さがあるから。

 

 

私が住む家の周りには、去年までたくさんの森があったのだけれど、

太陽光発電パネル設置のために今日もまた、

数えきれないほどの樹木が伐採されてしまった。

森に棲んでいたカラスたちは行き場を失い、半ばパニックで空を舞い、

今日の空はとても悲しい色をしていた。

 

昨年末に伐採された森に棲んでいたキジバトたちは、

新しい住処を見つけられないまま、

ほんの数羽だけが、冬の間中、近くの電線にしがみついていた。

雛を育てる巣が作れないから、

やがてこの辺りから鳩の姿は完全に消えてしまうのだろう。

 

土の中の蝉の幼虫も、外に出てきたところで、

生きるための木が存在しないから、

せっかく何年も土の中で待っていたのに、空を飛べないまま死んでしまうのだ。

 

一つの森が消えていくとき、何万もの命が消えていく。

自然の中で暮らしている生きものたちには、理不尽なことが多すぎる。

ついさっきまであった平穏が、一瞬で奪われることがあまりにも多い。

それを見ている私の方が、腹立たしくてやるせなくなる。

 

それでも生きものたちは、決して生きることを諦めない。

人間を恨むこともしないし、仕返しをすることもない。

24節気に従いながら、命の限り生きようとする。

命が尽きたら潔く、土に還ろうとする。

そんな健気な生きものたちに、私はただただ圧倒されるのだ。

 

 

今日、森を追い出されたカラスたちは、

今頃どこで夜を明かしているのだろう・・・

 

明日は、啓蟄。虫たちが目覚めるころ。

すべての命が芽吹き咲くころ。

 

 

 

・・・つづく・・・

 

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