ぬれ煎餅 vol.140

  • 2017.04.15 Saturday
  • 04:14

JUGEMテーマ:エッセイ

 

千葉県銚子名物の「ぬれ煎餅」が私は大好きだ。

あの、しっとりとした独特の触感と、

滲み込んだ醤油味がたまらない。

いやいや、味噌味も負けず劣らず美味しいのである。

もしも誰かに「好きなだけ食ってみろ」と言われたら、

私はとめどなく食べ続けることができるだろう。

 

一度食べたら癖になる、

一風変わったぬれ煎餅なるものを、

そもそもどうして思いついたのか・・・。

実はぬれ煎餅は失敗から生まれた名産品なのである。

 

以前、銚子へ遊びに行った際に買ったぬれ煎餅の袋には、

このようなことが書いてあった。

 

焼いている最中に醤油タレの中に落とした煎餅を、

売り物にできないからと、

ご近所さんやお客さんにお配りしているうちに、

評判が評判を呼んでやがて商品化されたのだと。

それが今ではすっかり銚子を代表する名菓に育っているのだから、

何がきっかけで成功するかは誰にも分からない。

 

私は思うのだ。一見失敗に見えることというのは、

実は神様が与えてくれた優しい修正なのではないかと。

その時は思い通りにならない現実が腹立たしかったり、

絶望的な気持ちになったりするけれど、

後になって気づくことがある。

そのおかげで新たな才能に目覚めていたり、

最も自分に合った生き方をしていることに。

つまり失敗とは、成功の前触れでもあるのだ。

 

 

今年の初めに、知人の娘さんが大学受験に失敗してしまった。

ずっと目標にしてきた第一志望校に不合格となり、

やる気のすべてを失ったみたいだと、

まるで自分のことのように知人は泣いていた。

 

「浪人するのは嫌だから、仕方なく第二志望校に行くんだって。」

 

知人は絞り出すようにそう言ったけれど、

第二志望校とて十分に人々の憧れであり、

入ることがなかなか難しい大学だ。

なんて贅沢なことを言っているのだろうと、私はそう思った。

 

「親として娘に何を言ってあげたらいいのか分からない。」

 

と知人が今にも死にそうな顔をして嘆いたので、

私はつい正直な気持ちを伝えてしまった。

 

「第二志望校の方が、

得るものがたくさんあるってことかもしれないよ。

一番行きたかった学校に入れなかったことはとても残念だけれど、

希望通りに入学できたとしても、すべてがうまくいくとは限らないもの。」

 

すると知人は驚いた顔をして言ったのだ。

 

「そういう考え方もあるの? だって第一志望校の方が断然格上だよ。」

 

「格上かどうかよりも、

自分の能力を発揮できるかどうかの方が大切なんじゃないのかな。

東大卒のプー太郎と中卒の田中角栄だったら、どっちの人生に共感できる?」

 

「角栄。」

 

「私も。与たえられ環境にはきっと意味があると思うの。

だからその場所でベストを尽くして、

どんどん自分を活かせる場所にしていけばいいんだよ。

そうすればいつかきっと最高の人生になっている気がする。

仕方がないから第二志望校へ行くなんて言ったら、

他の学生さんたちにも失礼だしね。」

 

「そっか・・・。」

 

知人の涙の勢いは、いつの間にかおとなしくなっていた。

 

娘さん本人にしてみれば、本当に辛いことだと思うけれど、

その辛さも、今まで必死に勉強してきたことも、

何一つ無駄になることはないのだから、

自分らしい大学生活を存分に楽しめばいいのだ。

きっと4年後の春にはこの大学でよかったと、

胸を張って巣立てるだろう。

 

 

濡れた煎餅など誰が食うものかと、

失敗を失敗のまま手放してしまった人たちと、

濡れた煎餅を前向きに捉えて、

失敗を成功に変えた人たちがいる。

 

どんな人生にするかはすべて自分次第。

誰のせいでもないのだ。

 

失敗はいつでも成功の前触れだと、

気づけば怖いものは何もない。

 

 

 

・・・つづく・・・

 

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