88歳で博士号取得 vol.190
- 2018.03.25 Sunday
- 05:28
JUGEMテーマ:エッセイ
NHKのニュース7を見ていたら、
殺伐とした事件・事故の間に挟まれて、
素敵な話題が一つキラリと光っていた。
それは尾関清子さんという88歳の女性が
立命館大学にて、
博士号を取得したというニュースだ。
尾関さんは30年以上にわたり、
日本各地で出土した縄文時代の布の編み方などについて、
研究し続けた人なのである。
そして日本の布に関する文化の起源と
特質をまとめた論文が、
このほど大学の審査で認められたのだ。
88歳での学位取得は、
現在のところ日本国内では最高齢とのこと。
この快挙にご本人は、
「感無量で、私の生涯の一番光栄な出来事」
と静かに語り、そっと涙を拭ったのだった。
そのお上品な所作と、
それとは対照的な意思の強さが、
私の胸をときめかせたのだ。
88歳と言えば米寿の祝いも過ぎて、
世間一般ではご老人と呼んで差し支えない年齢だろう。
けれど尾関さんは来る日も来る日も研究を積み重ね、
遂にその道の第一人者になったのである。
なんて素晴らしい生き方なんだろう。
人生という自分に割り当てられた時間を、
こんなにも意図的に使っているなんて。
これこそが「生きる=活きる」ということではないだろうか。
それは私が最もそうしたいと思う生き方である。
意図的に生きている人はとても美しい。
今に集中し、自分と深く繋がることで、
恐れという概念が消滅するからだ。
恐れのない生き方はパワフルで、
とてつもなくまばゆい。
その光こそが本来誰もが持っているはずの
生きる力なのだ。
誰もが持っているはずなのに、
人によってはすっかり忘れてしまっている光。
88歳の尾関さんが学位記授与式の際に
仰った言葉は、
「これからも研究に励んでいきたい。」
彼女は自分の限界などまるで設定していないのである。
そして最後に語った、
今の若者たちに伝えたいこと。
「何事もこれはと思ったら、
徹底的に関心を持って研究してもらいたいと感じている。」
88歳の博士が放った熱い思いに、
私は素敵に年齢を重ねるということの
神髄を見せて頂いたのだった。
・・・つづく・・・